今回は、Posted: 20 Jun 2025に掲載された論文タイトル
The Impact of Social Media Marketing on Consumer Behavior: A Meta-Analysis
(ソーシャルメディア・マーケティングが消費者行動に与える影響:メタ分析)
を分かりやすく解説・要約しました。
元の論文は下記の通りです。
出典元:SSRN
ソーシャルメディア・マーケティング活動が顧客エンゲージメントに与える影響:メタ分析による実証的知見
1. はじめに:なぜこの論文が注目されるのか
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ソーシャルメディアがマーケティングにおいて中心的なチャネルとなる中、各企業は「どの手法が効くか」「効果はどの程度か」を知りたがっている。
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個別研究は数多くあるが、結果がばらついており、統合して全体像をつかむ必要がある。
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この論文は、既存の実証研究をメタ分析(統合分析)し、さまざまな媒体・手法・消費者層・文化背景を横断的に検証している。
2. 論文の概要と目的
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著者:I. Muda, Samrat Ray, Rohit Yadav(ほか)
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掲載 / 公開:SSRN 論文として公開
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目的:ソーシャルメディア・マーケティング活動(SMMA)が顧客エンゲージメント(Customer Engagement)に与える影響を定量的に評価する。さらに、調節変数(商品特性、研究クオリティ、場所など)がその関係にどのように影響するかを明らかにすること。
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方法:
1. 論文選定:Web of Science や Scopus、さらには複数の学術データベースを横断して文献を収集
2. 最終サンプル:11件の研究から抽出された 50 の効果量(effect sizes)、総サンプル規模 3,360 件のデータ点を使用
3. 統計分析:メタ分析手法を使い、複数の修飾変数(moderators)を加えて関係性を検証
3. 理論的枠組みと仮説設定
論文では、ソーシャルメディアマーケティング活動(例えば、カスタマイズ、口コミ、エンターテインメント性、双方向性、トレンディ性など)が顧客のブランドエンゲージメントや行動意図に影響を与えるという仮説を設定しています。これらの施策を先行変数とみなし、顧客エンゲージメントを従属変数とするモデルを構築しています。
また、影響の強さが商品特性(例:商品の種類、耐久消費財かどうか)、研究方法の質、研究の場所や文化的背景といった要因によって変動する可能性があると想定し、これらを調節変数として分析に組み込んでいます。
4. 主な発見(メタ分析の結果)
以下は、この論文から得られた主な知見です:
項目 | 発見概要 |
---|---|
全体的関係 | カスタマイズ、口コミ(word of mouth)、エンターテインメント性、双方向性、トレンディ性は、すべて顧客エンゲージメントと正の累積相関を示した。 |
調節効果 | 商品特性、研究クオリティ、地域・文化背景などは、この正の関係の強さを左右する要因となった。すなわち、ある条件下では効果が強く、他の条件下では弱くなる可能性がある。 |
先行研究としての意義 | 従来、個別研究で見られた結果のばらつきを、このメタ分析は統合し、効果の有無や大きさをより明確にした点が貢献とされる。 |
5. 強みと限界・課題
強み
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複数研究を統合することで、個別研究の偏りやノイズを抑制できる。
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調節変数を導入することで、効果がどのような条件下で強まるか・弱まるかを検討できる点が、理論・実務双方への示唆となる。
限界・課題
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分析対象の研究数が限られている(11件)ため、母数の広さや代表性に制約がある。
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出版バイアス(統計的に意味ある結果が発表されやすい傾向)が残る可能性。
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異なる研究間で指標・測定法が異なる(異質性の問題)。
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文化変化や SNS 環境の急速な変化を完全には反映できていない可能性。
6. 実務およびマーケター・投資家への示唆
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施策設計の最適化:単に広告を出すだけでなく、「どの種類の活動を強化するか(例:口コミ vs 双方向性 vs トレンディ性)」を戦略的に選定するべき。
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ターゲット・コンテキスト重視:商品属性・文化的背景・地域市場などを考慮して活動をローカライズすべき。
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投資評価の視点:企業のSNS戦略の巧拙は、将来的なブランド力や顧客定着力に影響するため、投資判断の補助指標として有用。
7. まとめ
Impact of Social Media Marketing Activities on Customer Engagement: A Meta-Analysis は、ソーシャルメディアマーケティング活動が顧客エンゲージメントと正に相関することを複数研究の統合を通じて実証しました。調節変数の存在を明らかにしたことで、「いつ・どこで・どのような手法が効くか」を考える視点が加わりました。企業はこの知見を用いて戦略設計を洗練でき、投資家は企業のSNS戦略力を評価材料として扱えるようになります。
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