国内中古車大手「ガリバー」を展開するIDOM<7599>は、2025年2月期に大幅な増収増益を達成し、2026年2月期も着実な成長が見込まれています。
ブランド力・営業力に加え、大型店の積極展開や整備工場併設によるサービス品質向上が奏功し、競争環境が厳しい中古車市場において存在感を強めています。
本記事では、IDOMの最新業績、競争優位性、成長戦略、市場環境をフィスコレポートに基づいて詳しく分析します。
2025年11月14日に掲載されたIDOM<7599>の企業分析
元レポートは下記の通りです。
IDOM<7599>レポートPDF
出典元:FISCO
IDOM〈7599〉―中古車業界の再編期における成長戦略と収益構造を整理する
■ 企業概要
IDOM株式会社(7599)は、中古車買取専門店「ガリバー」からスタートした中古車販売大手で、現在は直営小売を軸に据えたビジネスモデルへ本格転換しています。
国内直営店舗は424店に達し、オートオークション(AA)を活用した卸売も併用することで、全国規模のサプライチェーンを確立しています。
株価指標(2025/10/31時点)
-
株価:1,154円
-
時価総額:1,233億円
-
PER:9.27倍
-
配当利回り:3.24%
中古車市場の再編が続く中、IDOMはブランド力・顧客基盤・IT活用力を強みに、業界内での存在感を一段と高めています。
競争優位性
IDOMが持つ主要な強みは次の通りです。
1. 圧倒的なブランド認知
「クルマ売るならガリバー♪」のCMと長年の買取実績により、全国的な認知度を獲得。
2. 来店・商談データの蓄積
長年の営業活動により、顧客データベースと査定ノウハウが蓄積されており、デジタル接客や価格査定アルゴリズムの高度化に活かされています。
3. 大型店戦略(大型販売店×整備工場)
直営大型店を核に、
-
展示車両の増加
-
整備・車検の内製化
-
顧客囲い込み
を図り、利益率の改善につながっています。
業績動向
【2025年2月期実績】
-
売上高:4,967億円(前年比+18.3%)
-
営業利益:199億円(+23.4%)
-
当期純利益:134億円(+17.5%)
中古車市場全体では競争が激化する一方、大型店の強化効果が収益増に大きく寄与しました。
【2026年2月期予想】
-
売上高:5,468億円(+10.1%)
-
営業利益:201億円(+1.1%)
-
当期純利益:125億円(−7.0%)
大幅増収に対し、純利益が減るのは次の要因が影響します。
-
大型店の増設による先行コスト
-
市場全体の中古車相場の変動
とはいえ、営業面では安定成長を見込んでいます。
日本の中古車市場の構造とIDOMの立ち位置
市場特徴
-
新車 477.9万台
-
中古車 260.1万台(シェア35%)
-
オートオークション制度の成熟
-
価格と状態の透明性”昔より圧倒的に高い
品質の標準化とデータ化により、中古車市場の信頼性は上昇し続けています。
競合環境
| 企業 | 特徴 |
|---|---|
| IDOM(ガリバー) | 買取→販売への転換が進む |
| ネクステージ | 名古屋発、販売店強化/買取も拡大中 |
| 旧ビッグモーター | 保険不正問題で大幅後退 |
競争環境が変化する中で、IDOMはブランド力と直営力を活かしシェア拡大を狙う局面にあります。
成長戦略
IDOMは中長期で以下に注力します。
1. 大型店の出店加速
販売台数増加・整備の内製化により、営業利益率を押し上げる狙い。
2. 整備工場の併設強化
アフターサービス事業の収益化で、LTV(顧客生涯価値)を最大化。
3. 既存店の生産性改善
在庫回転率の向上、データ活用、営業プロセス改善など。
4. オンライン販売への取り組み
フルオンライン化は手続き面で課題は残るものの、
-
写真データの高精度化
-
AI査定
などデジタル領域への投資が進んでいると見られます。
投資家ミーティング Q&Aの要点
-
社名の由来:挑む(IDOM)から
-
2名の共同代表制:国内・海外で役割を分担
-
利益率は相場変動の影響を受けるが透明性向上を重視
-
買取店は原則賃貸でリスク分散
-
大型店向けの人材採用は順調
総括
IDOMは、
「買取専業」から「直営販売×整備×デジタル」の総合中古車チェーンへと確実に進化しつつあり、国内市場の再編期において重要なポジションを占めています。
大型店戦略は既に成果を上げており、今後は整備・オンライン領域を含めて収益の多角化と利益率の改善が期待されます。
筆者コメント
中古車市場は、メーカー系ディーラー・独立系大手・地域の小規模店の三層によって構成されていますが、2023年の業界不祥事以降、消費者の選択肢は明確に「信用できる大手」へ傾きつつあります。
その意味で、IDOMが長期的に進めてきた 大型店シフトと店舗品質の底上げ は、結果論ではなく構造変化に合致した戦略だと感じています。
特に、整備工場併設型の大型店は、
までを一気通貫で囲い込めるモデルであり、これは中長期で競争優位性を高める動きです。
一方で、利益率の安定性は中古車相場の影響を受けやすく、四半期ベースではブレが出やすい点には注意が必要です。
業績をみる際は利益率よりも、大型店の進捗や在庫回転、営業プロセス改善の方が中期的な成長性を測る指標として向いていると感じます。
ネクステージが高速でシェアを獲る中、IDOMが「時間はかけても持続可能なモデル」を構築している点は、投資家としてはむしろ安心材料です。
市場再編が加速するフェーズでは、こうした財務規律を保ちながら積み上げる企業が後で強さを発揮するケースが多いです。
■ この企業を含む【13.商社・卸売りセクターまとめ】はこちら
[13.商社・卸売りセクター最新動向]
無料で株価チャートや決算データ、アナリストコメントなどを確認でき、企業分析の精度を高められます。
松井証券「マーケットラボ」徹底ガイド|無料機能・使い方・米国株版・他社比較まで解説
ここから確認
松井証券の「マーケットラボ」は、銘柄分析・チャート・四季報・スクリーニングまでを無料で使える高機能ツールです。 本記事では、松井証券マーケットラボの使い方、機能一覧、米国株版との違い、そして他社ツールとの比較までを徹底解説。 初[…]
