フルハシEPO〈9221〉は、木質系廃棄物の再資源化を軸に、資源循環型社会の構築を支える環境インフラ企業です。
2026年3月期上期は、売上高・営業利益ともに過去最高を更新した一方、前年の一過性要因の反動により経常利益・純利益は減少しました。
本決算では、短期的な利益変動だけでなく、拠点拡大や先行投資を伴う中期成長フェーズへの移行がどこまで進んでいるのかが重要なポイントとなります。
本記事では、上期決算の内容を整理したうえで、フルハシEPOの事業構造と今後の成長シナリオについて、FISCOレポートを基に読み解いていきます。
2025年12月04日に掲載されたフルハシEPO<9221>の企業分析
元レポートは下記の通りです。
フルハシEPO<9221>レポートPDF
出典元:FISCO
フルハシEPO〈9221〉
企業概要と事業内容
フルハシEPOは、木質系廃棄物の回収・再資源化を主力とする環境関連企業です。主力のバイオマテリアル事業では、建設現場や解体現場などから発生する木くずを回収し、燃料用木質チップなどへ再資源化することで、資源循環型社会の構築に貢献しています。
同社は木質再資源化分野におけるリーディングカンパニーとして、全国的な拠点網の整備を進めており、持続可能な社会を支えるインフラ企業としての役割を担っています。
2026年3月期上期(第2四半期)の業績概要
2026年3月期第2四半期累計の業績は、売上高が48億7,300万円(前年同期比8.8%増)、営業利益が5億400万円(同13.6%増)となり、売上高・営業利益ともに過去最高を更新しました。
売上高は6期連続で過去最高を更新しており、事業の拡大が継続しています。
一方で、経常利益は前年同期比24.8%減、中間純利益は同17.2%減となりました。これは、前年同期に営業外収益として保険解約返戻金が計上されていた反動によるものであり、事業そのものの収益力低下によるものではありません。
バイオマテリアル事業の動向
主力のバイオマテリアル事業は、売上高が前年同期比9.1%増と堅調に推移しました。一方で、同事業の利益は前年同期比4.0%減となっています。
これは、将来成長を見据えた人的投資や設備投資の増加によるコスト増が影響したものであり、戦略的な先行投資の側面が強いと位置付けられます。
市場環境としては、輸入木質燃料チップとの競争が続いていますが、円安の進行により輸入コストが上昇しており、国産木質燃料への需要は相対的に高まりつつあります。こうした環境は、国内資源を活用する同社にとって追い風となっています。
市場環境と事業戦略
木質資源を活用したバイオマスエネルギーは、再生可能エネルギーの一角として注目されており、資源循環型社会の実現に向けた重要な要素とされています。
フルハシEPOは、こうした社会的要請を背景に、木質資源のサーキュラーエコノミー(循環経済)を推進する事業モデルを強化しています。
輸入依存度の高いエネルギー構造が課題となる中、国産資源を活用したエネルギー供給の重要性は今後さらに高まると見られています。
中期経営計画の進捗状況
同社は中期経営計画「Fuluhashi Sustainable Plan 80th」を策定し、事業の量的拡大と全国ネットワークの強化を進めています。
その一環として、名古屋CEセンターが2025年9月に稼働を開始しました。加えて、現在12か所の新規拠点が進行中であり、木質資源回収・再資源化能力の拡充が進められています。
これらの拠点整備は短期的にはコスト増要因となるものの、中長期的には取扱量の増加や地域展開の加速につながると見られます。
通期業績見通し
通期業績については、上期実績が計画を下回る進捗となったものの、第3四半期・第4四半期にかけて売上高および利益の拡大が見込まれており、会社計画の達成を目指す方針に変更はありません。
名古屋エリアでの業績が特に好調であり、今後は他地域への横展開も進められる計画です。
株主還元策
株主還元については、2026年3月期の中間配当として1株当たり15円、年間配当として30円を予定しています。これは前期からの増配計画となります。
また、株主優待制度としてデジタルギフト5,000円分を年2回付与する制度を導入しており、同制度は中長期的に継続する方針が示されています。
今後の展望
フルハシEPOは、木質再資源化事業におけるリーディングカンパニーとしての地位を背景に、全国規模での事業基盤強化を進めています。
人的投資や設備投資を通じた成長戦略は短期的な利益変動を伴うものの、資源循環型社会の進展という大きな潮流の中で、中長期的な成長余地は引き続き注目されます。
筆者コメント
フルハシEPOは、「地味だが本質的に強い」企業の典型例だと感じます。
今回の決算だけを見ると、経常利益や純利益の減少が目につきますが、これは前年の保険解約返戻金という特殊要因の反動であり、事業の稼ぐ力が落ちたわけではありません。
むしろ注目すべきは、
-
売上高が6期連続で過去最高
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営業利益も過去最高更新
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拠点拡大・人的投資を伴う明確な成長フェーズ
に入っている点です。
木質資源の再資源化という事業は、景気循環よりも
「脱炭素」「資源循環」「国産エネルギー」といった構造テーマに支えられています。
短期的な利益率よりも、処理能力・拠点網・地域展開が将来の競争力を決める業界です。
その意味で、いまのフルハシEPOは
「利益を最大化する局面」ではなく、「利益を取りに行く準備段階」にあります。
派手さはありませんが、中期で見れば「いつの間にか評価が変わっている」タイプの銘柄。
環境・インフラ・実体経済寄りのテーマが好きな投資家にとっては、継続ウォッチに値する企業だと考えます。
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