【論文解説】7ファクター拡張Fama-Frenchモデルとは?資産価格研究の最新動向

今回は、
論文Construction of systematic factors for 7-factor Extended Fama-French model and its performance evaluation with other factor models
(7因子拡張ファマ=フレンチモデルの体系的要因の構築と、他のファクターモデルとのパフォーマンス評価)
を分かりやすく解説・要約しました。

出典元:SSRN(2025/6/20掲載)

DMM FX

7要因に拡張されたFama-Frenchモデルの構築と評価:資産価格研究の最前線

1. はじめに

資産価格モデルは、市場の価格形成や異常(アノマリー)を理解する上で欠かせないフレームワークです。中でもFama-Frenchモデルは、従来のCAPMを超えた説明力を持つモデルとして知られています。
当初は「3ファクターモデル」として提案されましたが、その後「5ファクター」「6ファクター」へと進化。そして今回紹介する研究では、新たに**「出来高(Volume)」と「回転率(Turnover)」を加えた7ファクターモデル**の構築と検証が行われています。


2. モデルの構築

この研究(Dmitry Garmashによる)は、既存の要因に以下を追加しています。

  • 収益性(Profitability)

  • 投資(Investment)

  • モメンタム(Momentum)

  • 出来高(Volume)

  • 回転率(Turnover)

これにより、従来説明が難しかった株式市場のアノマリー(低ボラティリティ効果、モメンタム効果など)をより包括的に説明することを目指しています。


3. パフォーマンス評価と比較

研究では、米国株式市場の危機期を含む複数の期間データを用い、以下の方法でモデルを検証しました。

  • リスクプレミアムの推定

  • ポートフォリオ形成と線形回帰

  • GRS検定によるモデル妥当性評価

  • 最大経験尤度推定(MEL)によるパラメータ検証

結果として、7ファクターモデルは5ファクターや6ファクターモデルと比べて説明力が向上し、特に低ボラティリティ・アノマリーやモメンタム・プレミアムを説明する力が強まることが確認されました。


4. 主な知見と課題

  • 改良点

    • 新たに追加されたVolume・Turnoverがモデルの係数の有意性を高めた。

    • 異常リターンを説明する力が強まり、より現実的な資産価格モデルとなった。

  • 課題

    • Volume・Turnoverが他の市場や時期でも一貫して有効かは不透明。

    • 新しい要因が「真のリスク要因」なのか、それともデータ依存的な一時的効果なのかについては議論が残る。

    • モデルの持続可能性(長期的に使えるか)を検証する必要がある。


5. 投資家・研究者への示唆

この研究は、単に要因を増やすだけでなく、市場アノマリーをどこまで説明できるかに焦点を当てた点で意義があります。

  • 投資家にとっては、ファクターモデルを利用したリスク管理やポートフォリオ構築の新たな視点となり得る。

  • 研究者にとっては、VolumeやTurnoverのような取引行動由来の変数を組み込むことで、従来の財務指標中心のモデルを補完する方向性を示している。


6. まとめ

「7ファクター拡張Fama-Frenchモデル」は、資産価格理論に新しい一歩を加えました。VolumeやTurnoverといった新しい要因は、市場の振る舞いをより正確に説明する可能性を示しましたが、その有効性と持続性については今後も検証が必要です。

本研究は、投資家にとって「より多角的に市場を理解するヒント」を、研究者にとっては「資産価格モデルの進化の方向性」を示す重要な論文といえるでしょう。

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