キャスター(9331)は、「リモートワークを当たり前にする」というミッションのもと、中小企業向けにBPaaS型の業務運用サービスを提供する企業です。
2025年8月期は大型案件の解約やARPU低下で営業損失が拡大したものの、第4四半期には単月黒字化を達成するなど、改善の兆しも見え始めています。
2026年8月期は売上高+14%、営業黒字転換を予想しており、バックオフィス代行で得た利益をAI Tech事業へ再投資する「人×AI」の戦略が成長ドライバーとして期待されています。
本記事では、フィスコレポートを基に、キャスターの業績動向・成長戦略・財務面の現状をわかりやすく整理します。
2025年11月20日に掲載されたキャスター<9331>の企業分析
元レポートは下記の通りです。
キャスター<9331>レポートPDF
出典元:FISCO
キャスター(9331)ARPU低下からの反転なるか|AI Tech投資の成果に注目
キャスターは「リモートワークを当たり前にする」というミッションを掲げ、中小企業向けにリモート人材活用を支援するBPaaS(Business Process as a Service)型サービスを主力事業として展開しています。累計利用社数は5,800社を超え、約800名の従業員がフルリモートで業務を行う組織体制が特徴です。
バックオフィス業務の代行や、タスクを細分化したマイクロロットサービスなど、多様な業務支援を提供し、リモートワーク領域で確固たる地位を築いています。
2025年8月期の業績概要
2025年8月期の売上高は4,588百万円(前年同期比+3.3%)となり増収を確保しましたが、営業損失は382百万円(前期−151百万円 → 今期−382百万円)と赤字幅が拡大しました。
BPaaS事業における大型案件の解約や、ARPU(顧客平均単価)の低下が主因ですが、第4四半期には単月黒字を達成しており、費用最適化の効果が徐々に表れ始めています。
セグメント別の状況
■ BPaaS事業(売上の約80%)
- 売上高:3,571百万円(前年比−0.7%)
- セグメント利益:628百万円(前年比−26.3%)
大型案件の解約の影響はあるものの、経理や労務領域の需要は堅調に推移しています。
■ その他事業
- 売上高:1,016百万円(前年比+20.6%)
- セグメント損失:146百万円
新規事業や子会社の寄与により増収を達成しました。
2026年8月期の見通し
2026年8月期は以下を予想しています。
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売上高:5,231百万円(前年比+14.0%)
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営業利益:10百万円(黒字転換)
BPaaSやHR領域で得た利益をAI Tech事業に再投資しつつ、粗利率改善と販管費最適化を進めることで営業黒字化を目指しています。ARPUの改善やCAC(顧客獲得コスト)低下など、成長に向けた基盤づくりは着実に進んでいます。
中期経営計画(2025〜2028)
2025年10月に発表された新・中期経営計画では、成長の中心をAI Tech事業に据え、提供価値を「バックオフィス代行」から「働く全体を再設計するサービス」へ拡大する方針が示されています。
最終年度(2028年)の数値目標は以下の通りです。
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売上高:7,488百万円
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純利益:222百万円
AIと人材のハイブリッド型BPaaSモデルを確立し、より高効率なサービス運営を実現する計画です。
財務状況
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総資産:1,872百万円(前期比−23.7%)
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自己資本比率:37.9%(前期44.9% → 低下)
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現金・預金:1,184百万円
財務指標は縮小傾向にありますが、現金水準は十分に確保されており、短期的な資金安全性に大きな懸念はないと考えられます。
株主還元
成長投資を最優先とする方針のため、当面は無配が継続する可能性が高い見通しです。
株主還元については、まず事業規模の拡大と収益基盤の強化を優先し、その成果を通じて間接的に株主へ還元する姿勢を示しています。
まとめ
キャスターはリモートワーク市場の拡大を追い風に、中小企業とリモートワーカーをつなぐBPaaS型サービスで存在感を高めてきました。
短期的にはARPU低下や大型案件の解約など課題が残るものの、AI Tech領域への投資強化によって業務効率化・サービス高度化が進む可能性があります。
2026年の黒字転換と、中期計画で掲げる成長シナリオの実現が、今後の企業価値・株価評価における重要なポイントとなるでしょう。
筆者コメント
キャスターは「人材×テクノロジー」という文脈で注目すべき企業ですが、現在はまさに転換点の只中にいるという印象を受けています。
大型案件の解約やARPU低下は確かに痛手ですが、第4四半期に単月黒字を達成できている点は高く評価できます。
特にBPaaSモデルは、AIの活用度が高まるほど利益率が改善しやすいため、AI Tech事業がどこまで成長するかが企業価値の大きな鍵を握ると考えています。
今後注目すべきポイントとしては、以下の4点です。
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ARPUがどこまで回復するか
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AI活用によって粗利率がどこまで改善するか
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CAC(顧客獲得コスト)が低水準で維持できるか
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人件費依存のモデルからどれだけ脱却できるか
成長投資フェーズである以上リスクも伴いますが、AI活用が進んだ場合にはBPaaS市場で独自の強みを確立する可能性も十分にある企業だと感じています。
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