株式会社酉島製作所〈6363〉は、上下水道や発電所、海水淡水化施設などの社会インフラを支えるポンプ専業メーカーです。
2026年3月期中間決算では、売上高が堅調に拡大した一方、外注費の増加などを背景に利益面では課題も見られました。
本記事では、同社の事業内容や中間決算の概要に加え、中期計画「beyond110」に基づく成長戦略や利益率改善に向けた取り組みについて整理します。
2025年12月01日に掲載された酉島製作所<6363>の企業分析
元レポートは下記の通りです。
酉島製作所<6363>レポートPDF
出典元:FISCO
酉島製作所〈6363〉中間決算報告と今後の展望
(2025年12月1日掲載/出典:FISCO)
企業概要
株式会社酉島製作所は1919年創業のポンプ専業メーカーであり、上下水道、発電所、海水淡水化施設など、社会インフラ分野を中心に事業を展開しています。
特に大型・高圧ポンプを強みとしており、海水淡水化プラント向けポンプでは世界的に高い評価を受けています。
事業領域は国内の官公需・民需に加え、海外市場にも広がっており、グローバルな水インフラ需要を背景に中長期的な成長を目指しています。
2026年3月期 第2四半期(中間期)決算概要
2026年3月期第2四半期の業績は、売上は増加した一方で、利益面では減少する結果となりました。
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受注高:483億円(前年同期比で減少)
※過去5年間で2番目に高い水準 -
売上高:412.4億円(前年同期比 +9.8%)
-
営業利益:5.3億円(同 ▲16.1%)
売上高は堅調に拡大しましたが、外注費の増加や想定外の費用発生が影響し、営業利益は前年を下回りました。
通期業績予想と修正内容
通期業績予想は以下の通り修正されています。
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売上高:890億円
-
営業利益:58億円
増収増益基調は維持されているものの、外注比率の上昇によるコスト増が利益率を押し下げています。
これに対し、同社は内製比率の引き上げを通じた製造コスト削減に取り組んでいます。
経営陣の見解と決算評価
代表取締役CEOの原田耕太郎氏は、受注高について、年間計画の達成に向けて順調に推移しているとの認識を示しています。
売上面では、
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国内官公需
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国内民需
-
海外子会社
のいずれも好調であり、事業環境自体は堅調であることが強調されました。
一方で、営業利益については、
-
外注費の増加
-
想定外コストの発生
が下振れ要因となっており、収益構造の改善が引き続き課題として認識されています。
中期計画「beyond110」と成長目標
同社は中期計画「beyond110」に基づき、2029年度に以下の目標を掲げています。
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売上高:1,000億円
-
営業利益:100億円
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営業利益率・ROE:10%水準
現在、受注体制は整いつつあり、出荷ベースでは約900億円に達しています。
これにより、売上目標の達成が視野に入ってきている状況とされています。
利益率改善に向けた取り組み
利益率向上に向けた最大のテーマは、「つくる力」の強化です。
内製化と生産体制の強化
同社では、
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フロントローディング手法の導入
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設計・生産リードタイムの確保
-
内製比率の引き上げ
といった施策を通じて、外注依存を抑え、製造コストの低減を図っています。
機械加工能力の拡充
機械加工能力の強化に向けて、
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子会社および外部加工会社の活用
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韓国・英国の機械加工会社の買収
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インド子会社での機械加工工場建設
を進めています。
インドの工場については、フェーズ1として機械導入および仮設が完了しており、本格稼働は来年3月を予定しています。
グループ全体での加工能力を高めることで、安定的な生産体制の構築を目指しています。
海外展開とサービス事業の位置づけ
海外市場では、サービス事業の強化が今後の成長テーマとされています。
サービス事業の立ち上げは現時点では遅れ気味ですが、中長期的な成長分野として位置付けられています。
エジプトではサービス工場が来年3月に稼働予定であり、国内外におけるサービス体制の拡充を通じて、収益源の多様化を図る方針です。
まとめ
酉島製作所〈6363〉は、
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水インフラを支えるポンプ専業メーカーとしての確固たる地位を有する一方で
-
売上は過去最高水準を更新しながらも
-
外注費増加による利益率低下という課題
を併せ持つ局面にあります。
中期計画「beyond110」に基づき、生産力の強化や内製化、サービス事業の拡大といった施策が進められており、利益構造の改善が今後の焦点となります。
受注環境は堅調であり、これらの取り組みが収益性向上につながるかどうかが、今後の注目点といえるでしょう。
筆者コメント
酉島製作所は、上下水道や発電、海水淡水化といった社会インフラ分野を支えるポンプ専業メーカーとして、長い歴史と技術力を有する企業です。
足元では売上が過去最高水準に達する一方、外注費の増加などを背景に利益率の低下が課題となっています。
同社はこの状況を踏まえ、生産力の強化や内製比率の引き上げを重要テーマとして掲げています。
中期計画「beyond110」では、売上高1,000億円、営業利益100億円という明確な目標が示されており、その実現に向けた設備投資や海外拠点整備が進められています。今後は、これらの取り組みが収益性の改善にどのようにつながっていくかが注目されます。
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