8.機械セクターまとめ

機械セクターは、日本の製造業の根幹を担う中核産業であり、工作機械・産業機械・建設機械・ロボット・精密装置などを幅広く含みます。
製造業の設備投資動向に強く連動し、景気循環型の側面が大きい一方で、近年は自動化・省人化・環境対応といった構造変化が新たな成長を支えています。

AI・IoT・ロボティクスの進化により、工場や物流現場ではスマートファクトリー化が進展。
さらに、半導体・EV・再エネなど成長分野への設備投資拡大が追い風となっています。
円安による輸出競争力の改善もあり、グローバルで再び存在感を高める日本の機械産業に注目が集まっています。

8. 機械セクター

最終更新:2025-10-28


いまの概況

機械セクターは、自動化・EV化・脱炭素投資の3軸を中心に再び成長局面へ。
2024年後半の半導体市況回復を背景に、FA(ファクトリーオートメーション)や精密機器分野の受注が改善しています。
一方で、人手不足と円安を背景に、省人化・国内回帰の二重投資が続き、国内設備需要も底堅い状況。
中長期では、防衛・宇宙・再エネ設備など「安全保障×エネルギー転換」領域への投資拡大が新たな成長ドライバーとなっています。
ただし、金利上昇による設備投資コストの増加や原材料価格の変動が収益を圧迫するリスクも残されています。


最新トピック

  • 設備投資サイクルの回復:国内外で半導体・自動車・インフラ関連の設備投資が再加速。企業の投資意欲は底堅く、FA(ファクトリーオートメーション)や産業ロボット関連の受注が回復傾向。

  • 米中摩擦とサプライチェーン再編:米国の補助金政策や中国リスク回避を背景に、「中国+1」「国内回帰」の生産再編が継続。日系機械メーカーには海外移転支援・自動化需要の追い風。

  • EV・次世代車関連需要の拡大:モータ・バッテリー生産設備や検査機器への需要が拡大。自動車部品メーカーの再編・共通化も進展。

  • 半導体製造装置・精密機器の受注回復:2024年後半からのメモリ投資再開で、製造装置・真空機器・ポンプメーカーに回復の兆し。先端ロジック向けEUV装置投資も堅調。

  • 省人化・ロボティクス需要の拡大:人手不足を背景に、物流・食品・医薬など非製造業向けのロボット需要が急増。AI制御や画像認識技術との融合が進む。

  • 防衛・宇宙関連の拡大:防衛装備品・航空機エンジン・衛星関連など、国家安全保障分野の機械需要が構造的に増加。政府の防衛費拡大が背景。

  • 再エネ・水素インフラ投資:脱炭素に向け、風力・水素・バイオマス関連設備の需要が増加。発電設備・圧縮機・バルブなど重機械メーカーに新しい成長機会。

  • 円安と原材料コスト:円安は輸出企業の収益押し上げ要因。一方、鋼材や精密部品など輸入コスト上昇で利益率格差が拡大。為替感応度の高い企業が注目される。

  • M&A・事業再編の加速:中堅メーカーの海外子会社再編や、IT・AI企業との連携強化が進む。特にFA・センサー・制御分野で業界再編が加速。


注目テーマ

  • 生成AI×FA(ファクトリーオートメーション)
    画像認識や異常検知、工程最適化に生成AIを組み合わせる動きが拡大。製造現場の品質管理や保守点検の自動化が進み、AI搭載ロボットが次世代FAの主役に。

  • 半導体・EV投資の再加速
    先端ロジックやメモリ投資再開に加え、EVバッテリー・モータ設備への投資も活発化。真空機器・検査装置・搬送システムなど精密機械分野に恩恵。

  • 防衛・宇宙関連の成長領域化
    国家安全保障強化と宇宙開発プロジェクト拡大により、エンジン・センサー・素材加工装置の需要が構造的に増加。官需に依存しない民間転用技術も注目。

  • 水素・再エネ・GXインフラ投資
    脱炭素化の流れで、風力発電設備、圧縮機、水素プラント関連の新規投資が拡大。重電・産業機械メーカーにとって次世代インフラ事業が成長ドライバーに。

  • 国内回帰×省人化の二重投資
    サプライチェーンの再構築に伴い、国内工場の自動化・デジタル化が加速。労働力不足と円安を背景に、搬送ロボット・協働ロボット・自動検査装置が堅調。

  • M&Aと業界再編
    中堅機械メーカーの統合・事業譲渡が進行。特に制御機器・油圧機器・精密加工分野では海外企業との連携も活発。AI/IoT企業との協業も増加傾向。

  • 為替・金利環境と設備投資意欲
    円安基調が輸出企業の収益を押し上げる一方、金利上昇による設備投資コストが制約要因に。為替感応度の高い企業や内需型メーカーの差別化が鮮明。


KPI(重要指標)

① FA(ファクトリーオートメーション)

  • 受注高/受注残高:生産設備投資サイクルを示す先行指標。

  • 稼働率(工場稼働率・ライン稼働率):設備需要の実態を反映。

  • FA関連売上比率:事業ポートフォリオ内での成長寄与度。

  • 自動化・省人化設備受注件数:新規導入・更新需要のトレンド把握に有効。


② 工作機械・精密加工機器

  • 工作機械受注総額(日本工作機械工業会):国内外の設備投資意欲を測る基本指標。

  • 受注内訳(内需/外需):海外景気や為替の影響を読み解く鍵。

  • 受注残高/納期遅延率:市況過熱・供給逼迫の度合いを示す。

  • 受注単価:高付加価値化(多軸・AI制御)進展を測る。


③ 産業ロボット・自動搬送機器

  • 出荷台数/生産台数(JARA統計):ロボット需要の基礎データ。

  • 導入先業種構成比(自動車/電機/食品など):景気感応度の高低を確認。

  • 海外売上比率:特に中国・北米向け動向が業績に直結。

  • 協働ロボット比率:人手不足対応型モデルの普及度を反映。


④ 防衛・航空・宇宙関連

  • 受注残高/契約額:官需中心のため長期受注が業績安定要因。

  • 防衛装備比率/航空機部品売上比率:収益の安定性・中長期成長を測る。

  • 政府予算関連動向(防衛費/GDP比):セクター全体の政策的追い風を示す。

  • 民需転用率(デュアルユース):防衛技術の民間応用による成長力。


⑤ エネルギー・環境機械

  • 再エネ・水素関連設備受注高:GX投資の進展を直接反映。

  • ボイラー/タービン/圧縮機出荷台数:エネルギーインフラ需要の実態。

  • CO₂削減設備投資額:企業の環境対応力を測る。

  • 海外プロジェクト受注件数:インフラ輸出拡大の進捗確認。


共通KPI(全体指標)

  • 営業利益率/ROE:収益性の基本評価指標。

  • 為替感応度(営業利益に対する円高・円安影響):外需依存度を示す。

  • 受注残高成長率:先行的な業績見通しの材料。

  • 研究開発費比率/設備投資額:技術力・中期競争力を反映。


個別レポート

  • JRC<6224>NEW
    └ 2026年2月期第2四半期で増収増益を達成。コンベヤ・環境プラント・ロボットSI事業が好調に推移
  • 井関農機<6310>NEW
    └ 営業利益97%増で過去最高水準へ|構造改革「プロジェクトZ」が奏功
  • リケンNPR<6209>
    └ リケン+NPR統合でシナジー追求、25年度売上22.9%増・営利34.7%増、次期は水素・電動・半導体分野で成長を狙う
  • ダイコク電機<6430>
    └ 過去最高益を達成、スマート遊技機市場への参入で次世代成長を狙うアミューズメント×情報システム企業。
  • 冨士ダイス<6167>
    2026年3月期に増収増益を見込み、収益重視の経営転換と海外事業拡大を進めている。
  • ヒーハイスト<6433>
    └ 中期的には2027年3月期に営業利益139百万円の回復を目指す方針
  • 酒井重工業<6358>
    └ 2025年度の業績は、売上高278億円、営業利益15億円。2026年度は、売上高300億円、営業利益12.5億円を見込み
  • 藤商事<6257>
    └ 2025年3月期は減収ながらも無借金経営を維持。堅実な財務基盤を背景に新機種開発と配当充実を進める
  • 加藤製作所<6390>
    └ 2025年3月期は特別損失の影響により当期純損失を計上。2026年3月期には増収・黒字転換を見込む。
  • パンチ工業<6165>
    └ 第1四半期では売上高10,171百万円(+5.3%)、営業利益384百万円(+26.5%)と好調
  • オーケーエム<6229>
    └ 2025年3月期は、舶用部門の伸長が業績を牽引し、売上高10,438百万円・営業利益783百万円を計上
  • 瑞光<6279>
    DELTA買収や防護服装置開発など新規事業を推進、2025年度は増収・黒字転換を目指す
  • 不二精機<6400>
    └ 2024年12月期は減益ながらも回復基調を維持し、2025年12月期には増収・経常利益2ケタ増を計画
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基礎知識(初心者向け)

  • FA(ファクトリーオートメーション)とは
    工場の生産工程を自動化・効率化するシステム。センサー、制御機器、ロボットなどが組み合わさり、人手不足解消と品質安定を支える。

  • 工作機械とは
    金属や樹脂などの素材を切削・加工する機械。製造業の母なる機械と呼ばれ、設備投資の先行指標として注目される。

  • 産業ロボットとは
    自動車・電機・物流など幅広い産業で活躍する自動機。協働ロボットやAI制御型など、人と共存する新モデルが拡大中。

  • 防衛・宇宙機械とは
    戦闘機・艦艇・衛星・エンジン部品など、国家安全保障に関わる産業機械。長期受注が多く、景気変動に左右されにくい。

  • エネルギー・環境機械とは
    発電・水素・再エネ関連設備を扱う重機械分野。脱炭素社会の実現に不可欠で、今後の成長余地が大きい。

この記事は「日本株17セクター総合ガイド」の一部です。
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