4.素材・化学セクターまとめ

素材・化学セクターは、あらゆる産業の基礎を支える供給産業であり、化学、繊維、ガラス、紙パルプ、非鉄金属など多様な領域から構成されています。
自動車・電子部品・住宅・医薬・食品包装など、ほぼすべての製造業の上流に位置し、景気や原材料価格の変動に強く影響を受けるセクターです。

2020年代に入り、素材業界は大きな構造転換期を迎えています。
化石燃料依存からの脱却、CO₂削減、リサイクル・再資源化など、環境対応と高付加価値化の両立が不可欠に。
また、半導体・電池・バイオ素材など新素材の開発競争も加速しており、
環境×技術×供給安定」を軸に再評価が進む分野です。

投資家にとっては、景気循環だけでなく、素材イノベーションやサステナビリティ対応力が中長期の成長を左右するポイントとなります。

4. 素材・化学セクター

最終更新:2025-10-30

いまの概況

2025年の素材・化学セクターは、エネルギー価格の落ち着きと円安効果により、収益は徐々に回復傾向。
原油・ナフサ価格の下落がコスト改善に寄与し、石油化学や樹脂メーカーの利益率が上向いています。

一方で、世界的な脱炭素シフトを背景に、再生プラスチック、バイオマス原料、リチウム電池材料など高機能・環境対応型素材への転換が加速。
電子部品や自動車向けに、フッ素樹脂・高純度ガス・絶縁フィルムなどの機能性化学製品の需要も拡大しています。

ただし、中国景気や欧州需要の鈍化が一部素材の在庫調整を引き起こしており、
グローバル需給バランスの変化に敏感な局面が続いています。


最新トピック

  • EV・半導体向け高機能素材が成長ドライバーに
    車載電池、絶縁フィルム、封止材、導電ペーストなどの需要が増加。AI・EV市場の拡大が化学各社の業績を押し上げ。

  • 原油・ナフサ価格の安定とコスト改善
    原材料価格が落ち着き、採算が改善。為替の円安効果も相まって収益環境が好転。

  • 中国景気の鈍化と在庫調整
    石油化学・汎用樹脂は中国需要減速で供給過剰気味。高機能品へのシフトが一段と進む。

  • 脱炭素・GX関連投資の拡大
    バイオプラ・水素・アンモニア・再エネ関連素材の研究開発が急進。ESG経営の中核分野に。

  • リサイクル・再資源化技術の普及
    ケミカルリサイクル、CO₂回収・再利用(CCU)の実証が進展。政府支援も後押し。

  • M&A・海外戦略強化
    欧米化学大手との提携、海外拠点での生産能力増強など、グローバル再編が進む。

注目テーマ

  • 高機能素材への転換
    電子・車載・エネルギー分野に対応する高付加価値化が各社の成長戦略の中心。

  • EV・電池材料の拡大
    リチウムイオン電池向けバインダー、電解液添加剤、絶縁材などの需要増加。

  • 脱炭素とグリーンケミストリー
    バイオ由来素材、水素製造触媒、CO₂回収素材など環境対応製品への投資が活発化。

  • 半導体・電子材料の伸長
    フォトレジスト、封止材、絶縁膜など、AI・データセンター向け素材が拡大。

  • リサイクル・資源循環型ビジネス
    ケミカルリサイクル技術の商用化、再生プラスチック市場の拡大。

  • 為替・原材料価格変動リスク管理
    為替ヘッジや原料調達網の多様化が収益安定化のカギ。


KPI(重要指標)

  • 原材料価格(原油・ナフサ・金属)

  • 需給バランス(国内出荷量/在庫率)

  • 営業利益率/ROE

  • 為替感応度(円高・円安の影響)

  • 研究開発費比率/新素材売上比率

  • 二酸化炭素排出量・削減率

個別レポート

  • 恵和<4251>NEW
    液晶ディスプレイ用光学シート「オパルス」が業績をけん引し、2025年12月期中間期は営業利益8.9%増と堅調
  • ダイキアクシス<4245>NEW
    └ 2025年12月期は増収減益ながら通期では増益を予想し、海外事業の拡大がカギ
  • クラボウ<3106>
    └ 化学・半導体関連へ注力しROE改善を狙う。

  • 戸田工業<4100>
    └ 成長柱を磁石/誘電体材料に振り向け、構造合理化を進行。中計「Vision2026」下で利益回復を図る。
  • アイカ工業<4206>
    アイカ工業は化学製品と建材で高付加価値戦略と海外展開を強化し、過去最高益・増配を達成。
  • AIロボティクス<247A>
    └ AI×D2C戦略で急成長、独自AI「SELL」により業務自動化と高収益化を実現する成長企業。
  • ソフト99コーポレーション<4464>
    カー用品とPVA素材のポーラスマテリアル事業を展開。2025年3月期に営業利益が過去最高を更新し、11期連続増配を予定。
  • 富士紡ホールディングス<3104>
    主力の研磨材事業が収益を牽引し、増収増益基調を維持。多角経営による安定成長と株主還元強化。
  • コニシ<4956>
    2025年3月期は全事業で増益し、過去最高益を更新。2026年3月期も増収増益を見込み、中期経営計画で1,500億円規模を目指す。
  • ウェーブロックHLDGS<7940>
    2025年3月期は売上高25,566百万円、営業利益405百万円を計上し、主力の金属調加飾フィルムが成長を牽引
  • 天昇電気工業<6776>
    2025年3月期は自動車減産の影響で営業利益が一時的に減少したものの、特別利益の計上により純利益は増加。
  • ダイナパック<3947>
    2024年12月期は、国内需要の堅調さと海外市場の成長を背景に増収を達成。財務面では自己資本比率が高水準を維持
  • 東洋ドライルーブ<4976>
    └ 中期的には、EV・精密機器向けの高付加価値製品開発と環境対応型潤滑被膜の強化に注力
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基礎知識(初心者向け)

  • 素材・化学とは?
    鉄鋼・非鉄金属・石油化学・機能性素材など、製造業全体の基盤を支える分野。景気や原油価格の影響を強く受ける。

  • 石油化学(ペトロケミカル)
    原油から精製されるナフサをもとに、プラスチックや合成樹脂を製造。需要は自動車・家電・建材など幅広い。

  • 機能性化学品・電子材料
    半導体、EV、液晶ディスプレイなどに使われる高機能素材。景気変動に強く、研究開発競争が激しい。

  • 環境対応素材
    バイオプラスチック、リサイクル樹脂、水素関連材料など。ESG・脱炭素の流れで注目度が上昇中。

  • 為替・資源価格の影響
    輸出入比率が高く、円安は収益押し上げ要因。原油・ナフサ価格上昇はコスト増要因となる。


 素材・化学セクターは「景気の温度計」でありつつ、
未来の産業(EV・半導体・脱炭素社会)を支える成長ドライバーでもあります。

この記事は「日本株17セクター総合ガイド」の一部です。
他の業界動向もあわせてチェックできます。
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