ネクストジェン〈3842〉は、音声通信を中心としたクラウドサービスを手がけるソフトウェア企業です。
通信キャリアや官公庁、一般企業向けに、クラウドPBXやSBC(セッションボーダーコントローラー)などのソリューションを提供し、音声通信のクラウド化という構造的な市場変化を取り込んでいます。
2026年3月期上期は、クラウドサービスの契約数増加を背景に、売上高・営業利益ともに大幅な増収増益を達成しました。
ストック型収益の積み上げが進む中、Microsoft Teams連携や新規事業の展開など、中期的な成長に向けた取り組みも着実に進展しています。
本記事では、FISCOレポートを基に、ネクストジェンの最新業績動向、成長戦略、財務状況、株主還元策について整理します。
2025年11月28日に掲載されたネクストジェン<3842>の企業分析
元レポートは下記の通りです。
ネクストジェン<3842>レポートPDF
出典元:FISCO
ネクストジェン〈3842〉2026年3月期上期決算を踏まえた企業分析
(2025年11月28日掲載/出典:FISCO)
企業概要
株式会社ネクストジェンは、通信キャリア、一般企業、官公庁向けに音声通信を中心とした通信技術ソリューションを提供する企業です。
主力はクラウドPBXやSBC(セッションボーダーコントローラ)など、企業の音声インフラを支えるクラウド・ソフトウェア領域であり、近年はクラウド移行需要を背景に事業拡大が続いています。
2026年3月期 上期決算概要
2026年3月期上期の業績は、売上・利益ともに高い成長率を示しています。
-
売上高:1,894百万円(前年同期比 +18.4%)
-
営業利益:190百万円(同 +78.3%)
-
当期純利益:156百万円(同 +85.7%)
-
EBITDA:324百万円(同 +39.6%)
売上拡大に伴い販売管理費や研究開発費は増加したものの、利益成長が費用増を大きく上回る形となり、収益性の改善が進んでいます。
通期会社計画は以下の通り。
-
売上高:3,800百万円(前期比 +4.9%)
-
営業利益:280百万円(同 +6.8%)
上期実績は通期計画に対して高い進捗率となっています。
中期経営計画(~2028年3月期)
同社は2028年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。
-
売上高目標:5,000百万円
-
営業利益目標:400百万円
-
営業利益CAGR:約20%
成長ドライバーとして、ボイスコミュニケーション事業の拡大を軸に、クラウド移行需要の取り込みを進める方針です。
契約数の積み上げ型モデルであり、ストック収益比率の上昇が見込まれます。
事業別トピックスと成長戦略
クラウドサービスの拡大
クラウドサービスのユーザー数は約6万に到達し、前期比で15%増加。
今期はさらに約30%成長を見込んでいます。
主力サービスである「U-cube voice(クラウドPBX)」は、利用数が前年同期比で11%増加。
老朽化したオンプレミスPBXからクラウドへの移行ニーズを着実に取り込んでいます。
「U-cube friends(SBC)」の成長
SBCサービスである「U-cube friends」の利用ID数は前年同期比69%増と大幅に伸長しました。
-
電話番号をIP回線へ移行
-
回線集約によるコスト削減
-
クラウドPBXとの併用
といった用途で採用が進んでおり、クラウドPBXとのクロスセル効果が確認されています。
Microsoft Teamsとの連携
上期の重要トピックスとして、「NX-B5000」がMicrosoft Teamsとの接続認定を取得しました。
これにより、
-
既存の電話番号を変更せず
-
Teamsから外線・内線通話が可能
となり、同社は日本で初めてMicrosoft Teamsと従来電話網を接続するソフトウェアを提供する企業となりました。
企業の業務コミュニケーション統合ニーズを捉えた展開といえるでしょう。
新規事業:業務プロセス管理(BPM)
新規事業として、Camunda社とOEM契約を締結し、業務プロセス管理(BPM)システムの提供を開始。
-
ローコード開発
-
業務フローの可視化
-
AI活用による業務自動化
といった特徴を持ち、既存顧客への付加価値提供や新規領域への展開が期待されます。
財務状況とキャッシュ・フロー
財務基盤
2026年3月期上期末の状況は以下の通り。
-
現金及び預金:約20億円
-
ネットキャッシュ:16億2,700万円
有利子負債を差し引いても潤沢なキャッシュポジションを維持しており、財務安全性は高いです。
売掛金は売上の平準化により減少しており、ストック型ビジネスへの移行が進んでいることを示唆しています。
キャッシュ・フロー
-
営業CF:前年同期比で減少
-
フリーCF:308百万円
営業CFの減少はビジネスモデルの平準化によるものであり、構造的な問題ではないとされています。
収益の安定化が進む過程にあると位置付けられます。
株主還元
-
年間配当予想:25.0円
-
配当性向:36.8%
加えて、200株以上保有でQUOカード3,000円分の株主優待を新設。
配当と優待を合算した総還元利回りは約4%水準となる見込みです。
市場環境
-
テレワークの定着
-
スマートフォン・クラウド活用の拡大
-
クラウドPBX市場の成長
といった外部環境を背景に、音声通信のクラウド化は引き続き進展するとみられます。
同社はパートナー企業との協業を通じ、市場シェア拡大を目指しています。
まとめ
ネクストジェン〈3842〉は、
-
売上・利益ともに高成長
-
クラウドPBX・SBCの堅調な拡大
-
Microsoft Teams連携という明確な競争優位
-
潤沢なネットキャッシュと安定した財務基盤
-
株主還元策の強化
といった要素を備えた企業です。
中期経営計画に沿った成長が進んでおり、音声通信のクラウド化という構造テーマの中で、今後の事業展開が注目されます。
筆者コメント
ネクストジェンは、音声通信という一見地味な分野において、クラウド化という構造的な追い風を着実に取り込んでいる企業です。
特にMicrosoft Teamsとの接続認定は、業務コミュニケーションの統合が進む中で差別化要因となり得るポイントといえます。
上期決算では売上成長以上に利益の伸びが目立っており、ストック型ビジネスへの移行が進んでいる点も注目されます。
中期経営計画の達成状況や、クラウド関連サービスの契約数推移を確認しながら、今後の成長を見守りたい企業の一つです。
■ この企業を含む【20.情報・通信業【10.情報通信サービス】セクターまとめ】はこちら
20.情報・通信業【10.情報通信サービス】セクター最新動向
【関連記事】決算書の読み方・分析方法|初心者でも「企業の実力」を見抜く完全ガイド
無料で株価チャートや決算データ、アナリストコメントなどを確認でき、企業分析の精度を高められます。
松井証券「マーケットラボ」徹底ガイド|無料機能・使い方・米国株版・他社比較まで解説
ここから確認
松井証券の「マーケットラボ」は、銘柄分析・チャート・四季報・スクリーニングまでを無料で使える高機能ツールです。 本記事では、松井証券マーケットラボの使い方、機能一覧、米国株版との違い、そして他社ツールとの比較までを徹底解説。 初[…]
