アイキューブドシステムズ<4495>MDMトップシェアと高継続率が支えるストック型成長モデル

アイキューブドシステムズ〈4495〉は、モバイルデバイス管理(MDM)サービス「CLOMO」を主力とするIT企業です。
国内MDM市場で14年連続シェア1位を維持し、高い顧客継続率を背景に安定した成長を続けています。

リモートワークやDXの進展により、企業が扱うデバイスやデータは年々増加しており、端末管理とセキュリティ対策の重要性は一段と高まっています。
こうした環境の変化を追い風に、同社はモバイル管理にとどまらず、PC資産管理分野への展開も進めています。

本記事では、FISCOレポートを基に、アイキューブドシステムズの事業内容や競争優位性、今後の成長ポイントについて整理し、中長期的な視点から同社の立ち位置を読み解きます。

2025年12月05日に掲載されたアイキューブドシステムズ<4495>の企業分析

元レポートは下記の通りです。
アイキューブドシステムズ<4495>レポートPDF
出典元:FISCO

アイキューブドシステムズ〈4495〉事業分析|MDM国内シェア1位、CLOMOを軸に広がるデバイス管理の成長余地

(2025年12月5日 FISCO掲載レポート基点)

企業概要

アイキューブドシステムズは、企業・官公庁・医療機関向けにモバイルデバイス管理(MDM)サービスを提供するIT企業です。
2001年に設立され、2020年に東証マザーズ市場(現グロース市場)へ上場した。本社は福岡および東京に構え、全国に営業拠点を展開しています。

主力事業は「CLOMO(クロモ)」ブランドによるMDMサービスで、スマートフォンやタブレット端末の管理・セキュリティ対策を通じて、顧客のDX推進を支える基盤を提供しています。
また、スタートアップ企業への投資事業も手がけています。


CLOMO事業の内容と役割

CLOMO事業は、企業が業務で利用するモバイル端末を一元管理し、情報漏洩や不正利用といったリスクを低減することを目的としています。

主な機能は以下の通りです。

  • 端末の状態監視

  • 利用ルールの適用・制御

  • 紛失・盗難時の遠隔ロックやデータ消去

  • 業務アプリやデータの安全な運用

これらの機能により、企業・病院・官公庁など多様な組織において、モバイル活用を前提とした業務環境の構築を支えています。


業績推移と成長見通し

2026年6月期の会社計画では、売上高4,508百万円、営業利益1,113百万円を見込んでおり、前期比でそれぞれ20.2%増、23.0%増と高い成長率が想定されています。

過去5年間の業績は右肩上がりで推移しており、MDM市場の拡大を背景に、安定した成長が続いている状況です。


MDM市場の環境と同社の優位性

データ保護ニーズの高まり

リモートワークやモバイル業務の普及により、企業が社外へデータを持ち出す機会は増加しています。
一方で、過去1年間において約37%の企業が、従業員による情報機器の紛失・盗難を経験したというデータもあり、端末管理と情報保護の重要性は一段と高まっています。

MDMは、こうしたリスクへの有効な対策として位置付けられており、事故発生時の迅速な対応や被害抑制を可能にします。

国内シェアと競争力

アイキューブドシステムズは、国内MDM市場において14年連続でシェア1位を維持しており、そのシェアは約21%に達しています。

競争優位性の背景としては、

  • 自社での販売・開発・運用・サポート体制

  • 自社サポートチームによる直接対応

  • 長期利用を前提としたサービス設計

が挙げられ、顧客満足度の高さが市場シェアの維持につながっています。


解約リスクと顧客維持戦略

MDMは、企業の基幹システムと比べると解約リスクが高いとされる分野であるが、同社の実績では継続率97.9%と極めて高い水準を維持しています。

MDMは通信回線契約とセットで導入されるケースが多く、解約は主に回線切り替えのタイミングで発生します。
同社は、顧客ニーズへの対応力やサポート体制の強化を通じて、解約リスクの抑制に取り組んでいます。


今後の成長戦略

ワンビ社買収による領域拡張

ワンビ社の買収により、従来のスマートフォン・タブレット管理に加え、PC資産管理分野への展開が期待されています。
これにより、管理対象デバイスの拡大、クロスセルによるARPU向上が見込まれます。

PC資産管理市場への進出

ワンビ社はPCメーカー向けOEM実績を有しており、2025年11月以降、CLOMOの一部販路を共有する計画です。
流通商社を中心とした販売網を活用し、2,500社超の導入実績を基盤に、新規顧客の獲得を進める方針が示されています。


利益率と投資スタンス

現時点では値上げの予定はなく、販管費の増加が利益率の改善を抑制しています。
同社は短期的な利益率よりも売上成長を優先し、M&Aや新市場開拓への投資を進める局面にあります。

中長期的には、事業規模の拡大とともに利益率の改善を図る考えであり、当面は「前年同額以上の利益確保」を重視しています。


NTTドコモグループとの関係

2026年3月に予定されている3G通信サービス終了に伴い、旧MDM「安心マネージャー」も提供終了となり、同社がOEM提供する「あんしんマネージャーNEXT」への契約切り替えが進むと見込まれています。


株主還元策

2025年3月には、デジタルギフトによる株主優待制度を新設しました。
年2回の優待付与を通じて、株主還元の充実と株式流動性の向上を図る狙いがあります。
優待内容には、AmazonギフトカードやPayPayポイントなどが含まれています。


まとめ

アイキューブドシステムズ〈4495〉は、MDM市場において国内トップシェアを有し、高い顧客継続率を背景に安定した成長を続けている企業です。

スマートデバイス管理からPC資産管理への領域拡張、NTTドコモ関連案件の切り替え需要など、中長期的な成長余地も大きいといえます。
短期的には投資フェーズにあるものの、ストック型収益モデルを基盤とした持続的成長が期待される局面といえるでしょう。

筆者コメント

アイキューブドシステムズは、派手さはないものの「非常に地味に強い」タイプの企業です。
MDMというニッチだが確実に需要が拡大する分野で、14年連続シェア1位・継続率97.9%という数字は、プロダクトとサポート体制の完成度の高さを示しています。

注目点は、

  • 通信回線と結びついた粘着性の高いストック型モデル

  • ワンビ社買収によるPC資産管理への横展開

  • 3G終了に伴うドコモ関連の切替需要

といった「自然増」が見込める成長要因が複数重なっている点です。

一方で、現在は売上成長を優先する投資フェーズにあり、短期的な利益率の伸びは限定的です。
そのため、短期トレードよりも中長期で事業の積み上がりを見る銘柄といえるでしょう。

セキュリティ、DX、リモートワークといった構造テーマの恩恵を受ける企業として、時間を味方につけられるかが評価の分かれ目になります。
TOITOI Financeとしては、「静かに強い成長株候補」の一角として注目しています。

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