2025年11月第1週市況|史上高値から急落・反発─AI株の高値警戒と円高の波

2025年11月第1週の東京株式市場は、AI関連株の調整と米金利観測の変化を背景に、値幅の大きい1週間となりました。
前週までの史上高値更新ラリーの反動で週初から利益確定売りが優勢となり、日経平均は一時2,400円超の急落。
ただ週後半には、米雇用指標の改善や企業決算の好感を受けて押し目買いが入り、再び5万1,000円台を回復しました。

全体動向(週の要因分析)

前週までの急上昇で過熱感が強まるなか、今週はAI・半導体セクターを中心に利益確定の売りが広がりました。
11月4日(月)は10月相場の勢いを引き継ぎつつも、年金・機関投資家による持ち高調整売りが優勢。
5日(火)は、米ハイテク株安とSOX指数(フィラデルフィア半導体指数)の4%下落が東京市場にも波及し、AI関連株が全面安となりました。

半面、バリュー株・商社・銀行株には資金が流入。
6日(木)には、米雇用リポート(ADP)や関税政策を巡るニュースを受けて投資家心理が改善し、押し目買いが優勢に。
さらに、バークシャー・ハザウェイが円建て債発行を準備しているとの報道をきっかけに、商社株(住友商・三菱商など)が買われました。

週を通して、「AI高値警戒」と「景気安定期待」がせめぎ合い、短期資金主導のボラティリティ(変動性)相場となりました。


 日別サマリー

■ 11月4日(月)

週明けの東京市場は大幅反落でスタート。
日経平均は前週末比914円安の5万1,497円まで下落し、節目の5万2,000円を割り込みました。
10月の歴史的上昇(+7,478円)に伴う過熱感が意識され、年金基金や機関投資家による持ち高調整売りが膨らみました。
午後にかけて円相場が1ドル=153円台へと円高方向に進んだことも、輸出株の重しに。
一方で、東エレクやファナックが業績上方修正を発表し、AI関連でも好決算銘柄が下支えとなりました。

■ 11月5日(火)

前日の流れを引き継ぎ、東京市場は続落。日経平均は一時2,400円を超える下げ幅を記録し、心理的節目の5万円を割り込みました。

背景には、米ナスダック指数の2%安・SOX指数(半導体株指数)の4%急落という米ハイテク株安の連鎖。
AI関連の主力銘柄(アドテスト、東エレク、ソフトバンクGなど)に売りが集中しました。

ただ午後には、これまで上昇に乗り遅れていた投資家による押し目買いが入り、やや下げ渋る展開に。
商社や建設などバリュー株の一角がプラスに転じ、相場の下支え要因となりました。

■ 11月6日(木)

週の中盤で日経平均は3営業日ぶりに反発。前日比671円高の5万0,883円まで戻しました。
米ADP雇用リポートが市場予想を上回り、米経済の先行き不安が後退したことが安心感につながりました。

また、米最高裁がトランプ政権の関税政策に懐疑的見解を示したと伝わり、米中摩擦緩和期待が台頭。
ディスコやレーザーテクなどの半導体株が上昇し、日経平均のリバウンドを主導しました。

さらに、バークシャー・ハザウェイの円建て債発行準備報道が商社株を押し上げ、住友商・三菱商などが買われました。
もっとも、10月の急騰後で相場の過熱感は根強く、上値では国内投資家の戻り売りが目立ちました。

■ 11月7日(金)

米国株市場では、ダウ平均が398ドル安、ナスダックが1.9%安とハイテク株中心に再び調整。
米雇用関連データでリストラ計画の増加や雇用減少が示され、景気減速懸念が再燃しました。

東京市場も翌週の取引ではその流れを引き継ぐ可能性があり、ハイテク株の上値警戒感が継続しています。
ただ、国内では依然として好決算銘柄が多く、需給面では押し目買い意欲も根強い状況です。

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 初心者向け解説

「バークシャー・ハザウェイの円建て債発行」とは?

バークシャー・ハザウェイ(Berkshire Hathaway)は、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるアメリカの巨大投資会社です。
コカ・コーラやアップルなど世界的企業の株を保有しており、
「長期投資の神様」と呼ばれるバフェット氏の動向は、世界の投資家が常に注目しています。


円建て債とは?

「円建て債(えんだてさい)」とは、日本円でお金を借りる(債券を発行する)こと。
海外企業が日本市場で資金を調達するために円で債券を発行する場合、円安のタイミングで有利になることがあります。

たとえば、

  • 米ドルより円の金利が低いため、日本で借りる方がコストが安い

  • 将来的に日本企業に投資する場合、円で調達しておけば為替リスクを減らせる

というメリットがあります。


なぜ注目されたのか?

今回、バークシャーが円建て債の発行を準備していると報じられたことで、
「再び日本の企業に投資するのでは?」という思惑が市場に広がりました。

実際、同社は過去にもこの円建て債で集めた資金を使い、
三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅などの日本の大手商社株を買い増ししてきた経緯があります。

そのため今回も、

「また日本株を買うのでは?」
「円安を利用して商社株を増やすのでは?」

という期待が高まり、住友商・三菱商など商社株が上昇しました。


投資家にとっての意味

  • 円建て債の発行=日本で資金を調達 → 日本市場への強い関心を示すサイン

  • 「世界の投資家が日本株を買っている」という安心感が広がり、日本株全体の信頼感を高める効果もあります。

  • 特に商社株や金融株など、バフェット関連銘柄と呼ばれるセクターが短期的に物色されやすくなります。


まとめ

項目 内容
発行主体 バークシャー・ハザウェイ(米国)
内容 日本円で資金を調達(円建て債)
意味 日本市場・商社株への関心再燃
投資家の反応 商社・金融株に思惑買い、安心感からリスクオン強化

ポイント
「円建て債=日本への資金シフトの兆候」と覚えておくと、海外勢の日本株への見方を早く察知できます。
今回のように商社株が強いとき=海外投資家が日本を買っているシグナルとも言えます。

「AI株の高値警戒」とは?

「AI株の高値警戒」とは、人工知能(AI)関連企業の株価が短期間で上がりすぎていることに対して、
「そろそろ調整(下げ)が来るのではないか」と警戒する投資家心理を指します。


なぜAI株が上がっているのか?

AI(人工知能)は、生成AI・自動運転・半導体などの分野で技術革新が進み、企業の収益構造そのものを変える可能性を持っています。

とくに2023〜2025年にかけては、

  • エヌビディア(NVIDIA) の爆発的な利益成長

  • 生成AI(ChatGPTなど) の世界的ブーム

  • 半導体需要の急拡大

が追い風となり、AI関連銘柄に資金が集中しました。

日本でも、

  • 東エレク(東京エレクトロン)

  • アドテスト(アドバンテスト)

  • ソフトバンクグループ(AIファンド関連)

などが、外国人投資家の買いで株価を押し上げました。


「高値警戒」が出る理由

AI関連株は将来への期待が大きい一方、「業績の実態より先に株価が上がりすぎる」傾向があります。
これが期待先行のリスクです。

観点 内容
ファンダメンタルズ(実力) まだ開発段階・収益は限定的
株価 「将来の利益」を先取りして急上昇
結果 期待と現実のギャップが広がると、売りが出やすい

需給面での過熱サイン

AIブームの中で、個人・海外短期筋・ヘッジファンドが一斉に同じ銘柄を買うため、
需給が偏り、小さなきっかけでも急落しやすい構造になります。

  • 「出来高が急増」=短期資金が集中しているサイン

  • 「ニュースでAI株ばかり報じられる」=テーマ過熱の兆候

  • 「PER(株価収益率)」が異常に高い=割高感

たとえば今週(11/1週)も、米SOX指数が4%下落すると、東京市場でもAI・半導体株が一斉に売られ、日経平均が一時2400円安まで下落しました。


心理的な側面:「期待」と「恐怖」

AIブームは「取り残されたくない」というFOMO(Fear of Missing Out)心理を伴います。
短期的には資金が殺到し株価を押し上げますが、
それが一巡すると「高値掴みしたくない」という恐怖心理に変わります。

つまり、

FOMOの買い → 割高警戒の売り
という循環が起こりやすいのです。

実際の相場への影響(2025年11月第1週)

  • 米パランティア・AMDなどAI関連が急落

  • 東京市場でもアドテスト・東エレク・SBGが連れ安

  • 投資家の「一旦利益確定しよう」という動きが強まる

  • バリュー(割安)株や商社株などに資金がシフト

このように、AI関連の調整=全体相場の一時的な下押し要因になります。


投資家にとっての教訓

タイプ 戦略
短期投資家 テーマの加熱を早めに察知し、利確・逆指値でリスク管理
長期投資家 AI関連の構造的成長には注目しつつ、押し目での買い場を待つ
初心者 「人気=安全」ではないと理解し、過熱時の追い買いを避ける

まとめ

  • AI関連株は成長テーマとして魅力大だが、短期的には過熱・急落しやすい

  • 「期待」と「実績」のギャップが生まれるタイミングが高値警戒

  • 長期では押し目狙い・短期では利確徹底が鍵

今後もAIは中長期テーマですが、「ニュースが最も明るい時」が短期天井になりやすい。
「話題が落ち着いた時」にこそ、冷静な買い場が来ると覚えておくと◎です。

 総括/来週の注目点

総括

史上最高値圏にあった東京市場は、AI関連株の過熱感修正と為替要因(円高)で一時的な調整。
ただ、決算内容や政策期待は底堅く、下値では押し目買いが入る展開が続きました。
週後半のリバウンドで、5万1,000円台を再び維持して週を終えています。

来週の注目点

  • 米雇用統計(11月8日発表)→ FRBの利下げ見通しに影響

  • 国内決算(電機・商社・金融)→ 業績上方修正の有無

  • 為替動向(円安再加速 or 調整)→ 輸出株・自動車株の動きに注目

  • 米国ハイテク株の反発有無(SOX・NASDAQ動向)

スタンス

短期的なボラティリティ上昇局面。
「押し目買い+逆指値管理」でリスクを抑えつつ、バリュー・商社・金融セクターへの循環資金に注目。
AI・半導体は好決算銘柄に絞って選別買いが有効。

【前週】2025年10月第4週市況|AI・半導体主導で日経平均初の5万円台突破

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