2025年10月第1週|クラウド・DX好調、不動産・製造も実需回復の兆し【セクター別企業分析】

2025年10月第1週は、情報通信・ITサービス・コンサルティング・不動産テック・製造支援など、多岐にわたる企業が決算・レポートを発表しました。
クラウド・DX投資の継続を背景に、AI活用や持続可能性を重視する企業が目立ち、業績面ではクラウド・BPO系の高成長が鮮明。
一方で、人材確保コストや採用競争など、成長局面ならではの課題も浮き彫りとなりました。
本稿では、グロービング、サイバーリンクス、FCE、タナベコンサルティングG、イード、平山ホールディングス、リログループ、システムサポートHD、TOKAIホールディングスなど、主要9社の最新動向をまとめます。

全体動向

今週の情報通信サービスセクターは、「AI・DX・クラウド」×「人材・業務支援」という2軸で明確な構造変化が見られました。

  • AI・クラウド系では好業績が続く。
     グロービング(277A)はAIエージェントによるコンサル業務代替を進め、売上+97.7%。
     システムサポートHD(4396)はクラウドインテグレーションを中心に前年比+22.3%増収と、セクター内でも突出した伸び。
     FCE(9564)もRPA・AI教育分野で業績上方修正を発表し、AI関連銘柄として注目度が高まっています。

  • BtoB支援・アウトソーシング企業も堅調。
     リログループ(8876)は福利厚生・社宅管理などのストック型ビジネスが安定成長し、2029年までの長期戦略を進行中。
     平山ホールディングス(7781)はインソーシング・派遣で14期連続増収。労働力確保と生産性向上の両立を図る体制を強化。

  • 地域・通信・メディア関連では安定的な収益基盤が目立つ。
     サイバーリンクス(3683)は官公庁クラウドが過去最高益を牽引。
     TOKAIホールディングス(3167)は通信とエネルギーを融合した地域密着型モデルで営業利益+18.7%。
     イード(6038)はメディア収益が下げ止まり、AIメディアへの移行を明確化。

  • コンサルティング各社は成長とM&Aを両立。
     タナベコンサルティンググループ(9644)は営業利益+48.6%と高水準。M&Aによる領域拡張と「TCG Future Vision 2030」に基づく長期戦略を推進。

総じて、クラウド・AI関連企業の二桁成長と、アウトソーシング・通信・BPO企業の安定収益という二極化構造が続いています。
マクロ環境の不透明さの中でも、IT投資の継続と人的資本経営の強化が明確なトレンドです。

9. 電気・精密セクター

平山ホールディングス〈7781〉

要約:
製造業のインソーシング・派遣で国内首位級。25/6期は売上362億円(+2.6%)、営業利益12.7億円(+13.5%)と過去最高を更新。26/6期も売上377億円(+4.3%)、営利13.4億円(+5.6%)を見込む。主力の製造支援事業が収益を牽引し、技術者派遣・海外展開も拡大中。中計「FIRST STAGE 2027」で27/6期営業利益22億円を目標。配当性向40%超で安定還元を継続。

KPI: 稼働社数/ROE(18.1%)/自己資本比率(40.5%)/営業利益率/技術者採用数

リスク: 採用難・離職率上昇/景気後退による派遣需要減/為替・海外子会社リスク

還元: 25/6期配当50円→26/6期51円予定、総還元性向50%目標。

10. 情報通信サービス・その他セクター

21.サービス業

グロービング〈277A〉

要約:
コンサルティング×クラウドSaaSを両輪とする新興DX支援企業。クライアント企業に常駐する「JIコンサルティング」により、経営戦略・DX推進・M&A支援を実行型で支援。25/5期は売上82.6億円(+97.7%)、営利28億円(7.6倍)と急成長。26/5期は売上115.6億円(+40%)、営利35.4億円(+26.4%)を見込む。
AIエージェントの実装を進め、人的コンサルの生産性を置換・拡張するフェーズへ。

KPI: コンサルタント数/AI関連収益比率/JI収益比率/平均単価

リスク: 採用競争の激化/AI開発の遅延/大型案件依存

還元: 現状は成長投資優先で無配。将来は収益拡大後に配当検討。

FCE〈9564〉

要約:
DX推進と教育研修を軸に「人的資本×テクノロジー」で成長を続ける企業。主力のRPAツール「Robo-Pat DX」とeラーニング「Smart Boarding」が好調。25/9期3Qは売上45.4億円(+23.3%)、営利9.2億円(+26.7%)。通期見通しを上方修正し、売上60.5億円(+20.9%)、営利9.1億円(+26.1%)へ。解約率1%台の高ストック性とAIエージェント事業の立ち上げが次の成長ドライバー。

KPI: 解約率(1%台)/RPA導入社数/Smart Boarding契約数/営業利益率

リスク: AI事業の立ち上げコスト/教育需要の変動/中堅企業市場での競合激化

還元: 配当性向25%目安、25/9期は1株7.5円予定。株主優待はデジタルギフト1,000円分。

タナベコンサルティンググループ〈9644〉

要約:
国内コンサルティング業界の先駆企業。創業68周年を迎え、経営戦略策定から実行支援までDXを軸に包括的な経営支援を提供。25/3期は売上145億円(+14.2%)、営業利益15億円(+48.6%)で過去最高を更新。DX需要とM&A寄与が成長ドライバー。26/3期は売上160億円(+10%)、営利18億円(+20%)を見込む。中計「TCG Future Vision 2030」では、M&Aとデジタル支援を両輪に2030年までの持続成長を目指す。

KPI: ROE(9.5%)/営業利益率/M&A件数/顧客リテンション率

リスク: 人材確保コスト/中堅企業の投資抑制/M&A統合リスク

還元: 総還元率100%方針(26/3期まで)。増配・優待拡充を実施中。自己資本比率74.3%と財務健全。

リログループ〈8876〉

要約:
福利厚生・社宅管理・海外赴任支援など、企業の「本業以外」を代行する総合アウトソーシング企業。29/3期に営業利益500億円を目指す「第四次オリンピック作戦」を進行中。25年度は増収増益ペースを維持し、26/3期は売上収益1兆500億円(+5.0%)、営業利益314億円(+3.2%)を予想。福利厚生・借上社宅管理が中核を担い、観光・海外赴任支援が伸長。

KPI: 営業利益率/ROE/管理戸数20.4万戸目標/海外赴任支援1.5万世帯/キャッシュフロー1000億円規模

戦略:

  • BtoB強化: 福利厚生・社宅管理のDX化とサービス拡充で法人契約拡大

  • BtoC拡張: 「Club Off」など会員サービスを基盤に観光・ライフ支援を多角化

  • グローバル展開: 海外赴任支援事業でシェア拡大、50億円営業利益を目指す

  • M&A: 賃貸管理・宿泊施設領域での統合を推進

リスク: 不動産市況・為替変動・人材コスト上昇/海外事業の為替リスク

還元:
配当性向35%に引き上げ、26/3期49円配予定。株主優待「Club Off」で宿泊・サービス優待を提供。キャッシュフローの35〜40%を株主還元へ充当。

20.情報・通信業

サイバーリンクス〈3683〉

要約:
食品流通・官公庁向けクラウドで高シェアを持つITサービス企業。25/12期中間期は売上88.5億円(+11.5%)、営利9.9億円(+74.6%)と過去最高を更新。官公庁クラウド事業が大幅伸長し、自治体DX需要を取り込み成長軌道に。通期は売上177.4億円(+11.8%)、営利17.3億円(+37.9%)予想。定常収入比率の上昇で安定性も強化。26年2月に次期中計を発表予定。

KPI: 定常収入比率/官公庁DX案件数/流通クラウド導入店舗数(1,232店)/ROE(13%以上目標)

リスク: 人件費・償却費の増加/キャリア政策変更によるモバイル事業減益/トラスト事業の収益化遅れ

還元: 年間配当30円(配当性向29.2%)、安定配当を基本方針。自己資本比率61.2%。

システムサポートホールディングス〈4396〉

要約:
クラウド・ERP・データベース支援を中心に成長するITソリューション企業。25/6期は売上高2,693億円(+22.3%)、営業利益221億円(+32.8%)と過去最高。クラウドインテグレーション事業が主力で、AI・DX投資の拡大が追い風。26/6期は売上3,200億円、営利268億円(+21.1%)を予想。人材採用・育成力と持株会社制による機動的経営が成長を支える。

KPI: クラウド比率/エンジニア稼働率/離職率7.1%/営業利益率8%台/ROE向上

戦略:

  • クラウド領域強化: AWS・Azure・ServiceNowなどマルチクラウド対応を深化

  • 人材投資: 技術者育成と採用拡大に22〜26億円投資

  • 北米展開: SI・人材派遣を軸に日系企業支援を強化

  • 中期計画(〜28/6期): 売上4,015億円・営業利益355億円を目標

リスク: エンジニア採用競争/海外案件の為替リスク/クラウド依存度の上昇

還元:
配当方針は継続増配型。25/6期50円→26/6期60円予定。安定成長とともに株主還元強化を掲げる。

TOKAIホールディングス〈3167〉

要約:
静岡を拠点とするライフスタイルインフラ企業。LPガス、通信、CATV、水、建設・不動産などを一体展開。25/3期1Qは売上581億円(+3.4%)、営業利益39億円(+18.7%)と過去最高を更新。全セグメントが増収し、エネルギーと通信が牽引。通期は売上2,530億円(+3.9%)、営業利益175億円を予想。中計では顧客基盤を344万人→357万人へ拡大目標。

KPI: 顧客数(+10万人)/営業利益率6〜7%/ARPU上昇/クロスセル率

戦略:

  • 通信×ライフライン連携: ガス・水・光回線のセット契約強化でLTV向上

  • CATV事業拡張: 地域密着とリプレイス需要取り込み

  • 人材投資・DX化: 顧客管理システム刷新とマーケティング自動化

  • 地域密着戦略: 静岡中心に関東・中部圏へ展開拡大

リスク: 原燃料価格変動/人件費上昇/通信価格競争/顧客離脱率上昇

還元:
配当性向40〜50%を維持。25/3期配当34円を予定し、安定配当とQUOカード優待を継続。

17. 不動産

シーラホールディングス〈8887〉

要約:
不動産デベロッパー事業とクラウドファンディング「利回りくん」を軸に、不動産管理・建設・再エネの4事業を展開。2025年にクミカと経営統合し、シーラホールディングスへ商号変更。26/5期は売上3,450億円、営利24.1億円と大幅増収増益を予想。統合シナジーによるスケール拡大と、不動産テック・再エネを組み合わせた新収益モデルを追求。
中期で総資産1,000億円・ROE10%を目標に掲げる。

KPI: 売上成長率/EBITDA/ROE・ROA/クラウドファンディング登録者数

リスク: 建築コスト高騰/金利上昇/統合後シナジー実現の遅れ

還元: 経営統合記念配12円予定。安定配当方針+株主優待あり。

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