全体動向
11月第3週の東京株式市場は、米国の金融政策をめぐる観測とハイテク株の決算を中心に推移しました。週前半は米景気の底堅さが逆に「利下げ鈍化=金利高止まり」への警戒につながり、ハイテク株が売られて日経平均は下落。週後半は米半導体大手エヌビディアの決算発表を前に思惑が交錯し、東京市場でも半導体関連株が相場全体をけん引しました。
また、ウクライナ情勢や米中関税問題などの地政学リスクも意識され、相場の不安定さを増幅。3万8000円台を下値とする攻防が続きました。
日別サマリー
11/18(月)
日経平均は422円安の3万8220円。米利下げペース鈍化観測で米金利が上昇し、ハイテク株安の流れが東京市場にも波及。米小売や製造業指標の強さが逆に「利下げが遅れる」と受け止められた。海運株・小売株は堅調だったが、医薬品やハイテクに売り。
11/19(火)
193円高の3万8414円。前日の米ハイテク株高を受け、半導体株が買い先行。先物に短期資金の買いも入り、一時300円超上昇。ただ20日のNVIDIA決算を控えて様子見も強まり、伸び悩み。
11/20(水)
62円安の3万8352円。米金融政策の不透明感とウクライナ情勢の緊張が重荷。NVIDIA決算前で手控えムードも強い。個別ではセブン&アイ、ソニーG、損保株などに材料買い。
11/21(木)
326円安の3万8026円。NVIDIA決算は好内容も株価が時間外で下落し、東京市場も半導体株主導で売り優勢。一時3万8000円割れも。地政学リスクや米株安も重なり、海外勢の投資意欲が後退。
11/22(金)
257円高の3万8283円。米株高を受けて3日ぶり反発。NVIDIA株が通常取引で上昇したことで半導体株も買い戻し。帝人へのアクティビスト関与など個別物色も活発。午前は400円高近くまで買われたが、利益確定売りで伸び悩み。
初心者向け解説
「利下げペース鈍化」と株価
株価と金利は密接に関係しています。特に米国の金融政策は世界中の株式市場に大きな影響を与えます。米国経済が予想以上に強い内容の経済指標を出すと、「景気が良いのだから利下げを急ぐ必要はないのでは?」という見方が広がります。これが「利下げペース鈍化」と呼ばれる状況です。
利下げが鈍ると金利が高いまま長く続くことになり、企業にとっては借入金のコスト(資金調達コスト)が重くのしかかります。また、株式市場においては、将来の利益を現在の価値に割り引く際の「割引率」が高止まりするため、ハイテク株のような成長企業のバリュエーション(株価評価)が下がりやすくなります。
その結果、米国の景気が堅調という本来プラスの材料が、逆に「利下げが遅れる=金利が高止まりする」という理由で株価にマイナスに働くことがあるのです。初心者にとっては不思議に感じるかもしれませんが、金融政策の思惑は株価にとって最も大きなテーマのひとつだと覚えておくと理解しやすいでしょう。
エヌビディア(NVIDIA)の決算ひとつで日本の半導体株が大きく動くように、今や「米国半導体=日本株全体の地合い」に直結しています。AIやデータセンター、自動車など幅広い産業を支える半導体は、日本市場でも相場を引っ張る中心的存在です。
地政学リスクの影響
株式市場は経済指標や企業業績だけでなく、国際的な政治・軍事の動きにも敏感に反応します。ウクライナとロシアの戦争、米中関係の悪化、中東での紛争などは、その代表例です。こうした「地政学リスク」が高まると、投資家はリスクを避けるために株を売り、安全資産とされる国債や金に資金を移す傾向があります。これを「リスク回避の売り」と呼びます。
例えば、戦争や大統領の発言ひとつで為替市場が急変し、輸出関連株が売られることがあります。また、原油価格が地政学的リスクで上昇すると、エネルギーコストの上昇が企業業績を圧迫し、株価の下落要因になることもあります。
初心者が意識すべきなのは「海外ニュースが日本株にもすぐ影響する」という点です。国内の材料だけを見ていると「なぜ急に株価が下がったの?」と戸惑うことがありますが、その背景には海外での政治・軍事ニュースがある場合が多いのです。株価は世界の出来事と常につながっていることを理解しておくと、相場の動きがぐっと分かりやすくなるでしょう。
総括
この週は「米金利」「半導体決算」「地政学リスク」という3つの要因が市場を揺らしました。日経平均は週を通じて3万8000円前後で推移し、方向感に欠ける一方で、海外要因に過敏に反応する日本市場の特徴が表れた格好です。個別株では帝人のアクティビスト報道やセブン&アイの急伸など、材料株への資金流入が確認されました。
投資家にとっては、米金融政策の先行きや半導体需要の動向が今後の株価を占うカギとなり、同時に海外の政治・軍事リスクへの敏感な値動きに注意する必要があります。
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