全体動向
6月第4週の東京株式市場は、心理的節目の「日経平均4万円」割れから始まりました。
短期的な過熱感と需給要因から利益確定売りが広がり、週前半は下落基調。
しかし、米ハイテク株高や国内投資家の押し目買いが下支えとなり、週後半には小幅ながら持ち直しました。
背景には、
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米国との関税交渉の不透明感
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国内外の長期金利上昇懸念
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7月米雇用統計の発表を控えた様子見ムード
といった要素が絡み、市場は方向感に乏しい1週間となりました。 -
日別の市況まとめ
7月1日(月)|6日ぶり反落、日経平均4万円割れ
日経平均:110円安の3万9459円-
過熱感を警戒した利益確定売りが広がり、値がさ株のファストリなどが下落。
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機関投資家による益出しの売りが需給悪化を招いた。
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輸出関連株や医薬品は円安を背景に買い支え。
7月2日(火)|続落、関税交渉不透明感が重荷
日経平均:一時500円超下落-
半導体株やゲーム株に利益確定売り。
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トランプ大統領の関税強化発言が市場の重しに。
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不動産株・陸運株は堅調、不動産株には投資判断引き上げの好材料。
7月3日(水)|小反発、米ハイテク株高が支え
日経平均:反発-
前日の米ナスダック最高値更新が追い風となり、半導体株中心に買い。
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ただし、米雇用統計を控えて様子見ムードが強く、動きは限定的。
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自動車・鉄鋼株は上昇、SBGや医薬品株は軟調。
7月4日(木)|小幅高、根強い先高観も関税不安で上値重い
日経平均:25円高の3万9810円-
株価指数先物に海外投資家の買いが入り、一時4万円台を回復。
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しかし米関税政策の不透明さから利益確定売りが出て伸び悩み。
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半導体関連や一部大型株が上昇、TDKや京セラは下落。
初心者向け解説①:心理的節目「4万円」の意味とは?
株式市場では「キリの良い数字」が投資家心理に大きな影響を与えます。
例えば日経平均が4万円という大台に乗ると、「高すぎるから一度売っておこう」と考える投資家が増えやすくなります。
これを心理的節目と呼びます。節目を割り込むと失望売りが出やすい一方で、「押し目買い」のチャンスと捉える投資家も現れるため、株価の変動が大きくなる傾向があります。
初心者向け解説②:需給要因とは?
株価は企業の業績や経済指標だけでなく、「需給(じゅきゅう)」=買いたい人と売りたい人のバランスによっても大きく動きます。
例えば、ある銘柄を欲しい人が多ければ株価は上がり、逆に売りたい人が多ければ株価は下がります。
これは単純な力関係のように見えますが、実際の市場ではもっと複雑です。-
月初や月末、四半期末には、機関投資家(年金基金や投資信託)が「決算対策」や「運用報告用」に売買を行うため、需給が大きく動きます。
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株価が大きく上昇したあとは「利益を確定したい」という売りが増えるので、需給が悪化しやすい。これを「利益確定売り」と言います。
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逆に株価が大きく下落したあとは「安いから買っておこう」と買いが入りやすく、需給が改善します。これを「押し目買い」と呼びます。
今回の6月第4週は、直前まで日経平均が急ピッチで上がっていたため、機関投資家や短期筋が「利益を一度確定して現金に戻しておこう」と動きました。これが需給の悪化=株価下落圧力となったわけです。
初心者は「業績が良いのになぜ株価が下がるの?」と疑問を持ちやすいですが、需給要因による一時的な調整はよくあることです。
需給が悪化しても、企業の本質的な価値が変わらない限り、中長期的には再び上昇に転じるケースも多いのです。
初心者向け解説③:米雇用統計が控えると何が起きる?
米国の雇用統計は「世界で最も注目される経済指標」と言われます。発表は毎月第1金曜日。非農業部門雇用者数や失業率、平均時給といったデータが発表され、米国経済の健康診断のような役割を果たします。
市場にとって重要なのは、この数字がFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に直結するという点です。
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雇用が強すぎると → 「景気過熱でインフレが進むかも」と警戒され、FRBが利上げを検討 → 株価にマイナス。
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雇用が弱いと → 「景気減速で利下げが必要かも」と期待され、FRBが緩和姿勢に → 株価にプラス。
そのため、雇用統計の前は「結果次第で株価が大きく動く」と考える投資家が多く、様子見ムードが強まります。具体的には:
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投資家がポジションを減らし、売買代金が細る
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株価が方向感を失い、小さな値動きで膠着する
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一部の短期筋だけが仕掛け的に動くため、乱高下が出やすい
今回(6月第4週)も、7/3以降は米雇用統計を控えて投資家が積極的な売買を控えたため、相場はやや鈍い動きになりました。
初心者は「雇用統計=ただの数字の発表」ではなく、「FRBの金利政策を動かすかもしれない材料」と理解すると良いです。雇用統計をきっかけに、株式だけでなく為替や債券、世界中のマーケットが一斉に動くことがあるため、世界経済を理解する上での入門テーマとしても重要です。
総括
この週は、大台の4万円を割ったことによる利益確定売りが先行したものの、
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米ハイテク株高
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円安基調
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個人投資家の押し目買い
が支えとなり、下げ幅は限定的でした。
今後は米国の雇用統計や関税政策の動向が焦点で、相場の方向感を左右する重要な要因となります。
投資家は心理的節目や需給要因も意識しつつ、冷静に立ち回ることが求められるでしょう。 -