全体動向
6月第3週後半の東京株式市場は、日経平均が一時4か月ぶりの高値をつけたものの、中東情勢の緊迫化を背景に反落しました。
円安基調や日銀の金融政策姿勢が追い風となった一方、イスラエル・イランの衝突や米国の軍事発言が警戒感を呼び、投資家心理を冷やしました。
週を通じて「円安と押し目買いが支え」「中東リスクで反落」の綱引きとなり、方向感に欠ける展開が続きました。
日別の市況まとめ
6月18日(火)|3日続伸、4か月ぶり高値水準
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終値:3万8,888円(前日比上昇、※仮数値は参考)
円相場が一時1ドル=145円台まで下落し、輸出株に買いが集中。
日銀が追加利上げに慎重姿勢を示したことも安心材料に。
また、任天堂の「スイッチ・ツー」販売好調を受け、ゲーム株も上昇。
6月19日(水)|4営業日ぶり反落、中東リスク警戒
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終値:3万8,488円34銭(396円81銭安)
利益確定売りが広がり、半導体株を中心に軟調。
米国市場が休場だったこともあり、中東情勢に関するヘッドラインに敏感に反応。
トヨタやダイキンが下落する一方、セブン&アイや三越伊勢丹などディフェンシブ株は買われました。
6月20日(木)|小幅続落、押し目買いも限定的
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終値:3万8,403円23銭(85円11銭安)
中東情勢の不透明感と欧州株安が重荷となり、小幅続落。
ただし、個人投資家による押し目買いや半導体株の下支えで下げ幅は限定的。
AI関連や電子部品株に買いが入った一方、ゲーム株・通信株は軟調。
初心者向け解説
① 円安・ドル高が株価に与える影響(誰が得して、誰が苦しい?)
円安になると、海外で稼いだ売上を円に直したときの金額が増えるため、自動車・機械・電機などの輸出企業の利益が増えやすく、株価は上がりやすくなります。
これを「為替感応度(1円動くと利益が何億円変わるか)」で測るのが実務の基本。決算資料や説明会で企業が開示していることが多いので、投資判断の材料にできます。
一方で、原材料や穀物・エネルギーを輸入する企業はコスト増になりがち。
食品・外食・小売・航空などは仕入れや燃料のコスト上昇が重く、利益圧迫→株価の重しになりやすい点に注意です。
ただし現場では、①為替ヘッジ(先物等で為替を固定)、②価格転嫁(値上げ)、③ドル建て売上の比率(自然ヘッジ)といった防御策を組み合わせます。決算で「ヘッジ比率」「値上げ進捗」「ドル建て売上比率」が語られていれば、円安耐性が高い可能性。
チェックリスト
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その企業の主要市場・通貨は?(売上のどこでドルが入るか)
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為替感応度と想定レート(会社計画に織り込むレート)
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原材料の輸入依存度と価格転嫁の進み具合
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ヘッジ方針(何か月先まで、どの比率で固定?)
→ 円安=全面的に買い、ではありません。
為替で得か損かの差が銘柄間でパフォーマンスを分けます。
② 地政学リスク(中東情勢)が相場を揺らす理由
戦争・衝突・制裁などの地政学リスクが高まると、投資家は「リスク資産→安全資産」へ資金を移す(リスクオフ)のが定石です。
株が売られ、国債・金・一部通貨に資金が流入しやすくなります。
伝わり方の主要ルート
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リスクオフ・センチメント:ヘッドラインで先行き不透明→ポジション圧縮→株売り
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コモディティ経路:原油・ガスが上昇→輸送・電力コスト上昇→企業利益圧迫→株安
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サプライチェーン:海上輸送や特定地域の生産が滞る→一部業種の納期・在庫に影響
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為替:安全通貨とされる通貨に資金が移動(状況次第で円高/円安どちらもあり得る)。原油高と組み合わさると「資源輸入国の円安」になりやすい局面も。
相場で起きやすい現象
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ボラティリティ上昇(VIX等)→短期筋の売買増
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ディフェンシブ株(電力・通信・食品・医薬)に相対資金流入
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先物主導で指数が荒く上下(現物より早く動くため見た目の値幅が大きい)
見誤りを避けるコツ -
一過性ヘッドラインか、制裁・供給停止など実体経済に波及するかを切り分ける
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原油チャートと為替の同時チェック(コスト押し上げ×為替で二重苦のセクターが出る)
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個別では地域売上比率と代替調達の可否を確認
③ 「押し目買い」の正しい使い方(どこで入って、どこで撤退?)
押し目買いは、上昇トレンドの途中の一時的な下落(押し目)を安く拾う戦術。
トレンドが上向きであることが前提で、長期下落中の反発狙い(逆張り)とは別物です。
実務の型
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環境認識:指数・セクター・個別の上昇トレンドを確認(移動平均の向き、直近高値・安値の切り上げ)
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エントリーの目安:
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20~25日移動平均線近辺への押し
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直近の支持ライン(ギャップ窓・出来高が積み上がった価格帯)
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オーバーシュート(急落)時は分割で拾う
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撤退・管理:
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損切りラインを事前設定(支持割れ/直近安値割れなど)
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分割利確でリスク低減(半分利確→残りはトレイリング)
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指数イベント(FOMC・雇用統計)前は建玉軽め
よくある失敗
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「落ちるナイフ」に素手で触る(下落トレンドでの“押し目”はただの下げの一部)
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出来高を見ない(出来高を伴う下落は需給悪化のサインになりやすい)
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ニュースを軽視(悪材料の本質が需給や構造に響くと押し目は機能しにくい)
チェックリスト -
トレンド上向き/相場全体の地合いは悪化していないか
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支持帯と出来高の裏付けあり
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イベント前後のポジションサイズは適正か
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資金管理(1回のトレード損失を総資金の◯%に制限)
市況を読んだら、次は行動!
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総括
この週は、円安基調と日銀の金融政策スタンスが株価を押し上げた一方、中東情勢の緊迫化で利益確定売りが広がりました。
押し目買いが下支えとなったものの、国際リスクに振らされやすい展開が続き、相場の方向性は定まりませんでした。
今後は中東情勢の行方に加え、米FOMCやパウエル議長の発言が焦点となり、相場を左右する可能性が高いといえます。