全体動向
5月最終週の東京株式市場は、トランプ大統領の通商政策を巡る発言や動きに振り回される展開となりました。
週前半は、EUへの追加関税延期が好感され、投資家心理が改善。円安進行も追い風となり、日経平均は大きく上昇しました。
しかし、週後半には関税政策の不透明感が再燃し、再び大幅下落。特に30日はMSCI指数の定期見直しによる大規模な需給調整も重なり、値動きの荒い展開となりました。
為替や通商政策、需給イベント(MSCIリバランス)が株価を大きく揺さぶった週でした。
日別市況まとめ
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5月26日(日)|関税延期で大幅続伸
日経平均:371円高の3万7531円
→ トランプ大統領がEUへの追加関税を7月まで延期すると表明。
安心感からソニーG、リクルートなど主力株が上昇。
一方、百貨店株など一部は軟調。 -
5月28日(火)|3日続伸、円安が追い風
日経平均:192円高の3万7724円
→ 円安・ドル高で自動車株や輸出株が買われる。
午後には円安進行に合わせて上昇幅拡大。
トヨタやソニーG、TDKなどが堅調。 -
5月30日(木)|大幅反落、関税不透明感とMSCIイベント
日経平均:467円安の3万7965円
→ 米関税政策への不透明感と円高進行で売り優勢。
さらにMSCI定期見直しで需給悪化し、クロージングにかけて急落。
東エレク、アドテストなど半導体株が下落。
一方、トヨタや資生堂など一部の内需株は上昇。
初心者向け解説
① 「関税延期」がなぜ株高につながるの?
株価は「企業が将来どれだけ利益を出せるか」を材料に動きます。関税が発動されると、輸入コストが増えて利益が減る → 株価は下がる、と考えられます。
逆に「延期」や「回避」といったニュースは「当面のリスクが減った」と捉えられ、株価上昇につながります。
→この週も、EU関税延期が発表された26日に株価が急伸しました。政治的イベントが市場心理を大きく動かす典型例です。
② 円安・円高が株に与える影響
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円安(例:1ドル=145円)
輸出企業が海外で稼いだドルを円に換えると利益が増える → 自動車や電機など輸出関連株に追い風。 -
円高(例:1ドル=143円)
逆に利益が減るため、輸出株にマイナス。投資家心理も悪化しやすい。
→この週は26日・28日に円安で株価が上昇、30日は円高で株価が下落。教科書通りの動きでした。
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③ MSCIの定期見直しとは?
MSCIは世界中の投資家が参考にする株価指数。
年に数回、銘柄の入れ替えがあり、ファンドはその比率に合わせて自動的に売買します。
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新規採用銘柄:大量の買いが入る
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除外銘柄:大量の売りが出る
30日はこのMSCIイベントが需給を悪化させ、終盤に大きな売買が集中しました。投資初心者にとっては「需給イベントの影響力の大きさ」を学べる事例です。
④ 利益確定売りと戻り待ち売り
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利益確定売り:上がった株を売って利益を確定させる動き。
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戻り待ち売り:高値で買って損していた人が、株価が戻ったところで「やっと売れる」と売る動き。
30日の下落は、この2つの売りが重なった典型例でした。
初心者は「株価が急に戻ったときには、売り圧力も増えやすい」と理解しておくと良いです。
この週の動きを整理すると、
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政治発言(関税延期)
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為替(円安・円高)
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指数イベント(MSCI入れ替え)
といった「イベント」が株価を大きく動かしました。
こうした要因は企業の業績とは直接関係なく、短期的な需給と投資家心理で価格が揺れるのが特徴です。
→初心者は「イベントで動いた株は短期で戻ることもある」と意識しておくと、無駄な焦りを防げます。
総括
5月最終週は、トランプ大統領の関税延期表明で上昇 → 再び不透明感と需給イベントで急落と、激しい値動きが続きました。
投資初心者にとっては、
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政治発言や通商政策が市場を大きく動かす
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円安円高が輸出株の明暗を分ける
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MSCIのような「需給イベント」が株価を一時的に大きく動かす
という基本を学べる週でした。
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